冷媒用被覆銅管はさまざまな環境や外部要因から非常に稀ですが腐食・割れが生じることがあります。
そのような問題を予防する対策をご紹介します。
1.銅管の腐食・割れが生じる要因と対策「疲労割れ」
■現象
振動や管の温度変化に伴う伸縮、いわゆる熱応力等により、繰り返し応力が作用することによって金属に割れを生じる現象が疲労割れである。
冷媒用被覆銅管で局所的に凹みが生じた部分において発生した疲労割れ発生部の外観を写真1に、割れ部の断面を写真2に示す。
・割れは、凹み部の片側側面に5mm程度の長さでやや湾曲して発生しており、その通路は結晶粒内を貫通する粒内割れである。典型的な疲労割れ事例の一つである。
■要因・対策
・配管に温度変化が生じるような場合には、熱応力の発生は避けられないが、そのことによって、必ず疲労割れを生じるわけではなく、発生した応力を局所に集中させることが問題となる。
・応力が集中しやすい場所として、曲がり部、ろう付け部近傍ならびに局所的な凹み部等がある。
・疲労割れ対策としては、発生する応力を1箇所に集中させないことである。具体的には、振動を銅管に伝えないこと、管に凹み等の変形を与えないこと、配管過程の必要箇所に伸縮曲管等を取り付け、系統内で発生する熱応力を分散させることが重要である。
2.銅管の腐食・割れが生じる要因と対策「応力腐食割れ」
■現象
特定の腐食媒を含む環境で、引張応力を受けた金属がびび割れを生じる現象を応力腐食割れと呼ぶ。
冷媒用被覆銅管に発生した応力腐食割れ発生部の外観を写真3、写真4に、割れ部の断面を写真5、写真6に示す。直線部分に長さ40mmの縦割れが発生しており、その通路は結晶粒と結晶粒の界に沿って進行する粒界割れである。典型的な応力腐食割れ事例の一つである。
■要因・対策
・応力腐食割れの要因としては、腐食媒、応力、水、空気さらに銅管の調質による割れ感受性等が挙げられ、この割合が高い程割れの確率は高くなる。
・一般には、割れの確率は時間の次元で、下式で考えられている。
1/T(時間)=(1)腐食媒×(2)水分×(3)酸素(空気)×(4)応力×(5)割れ感受性
つまり、上式の5要素は乗算であるから、いずれかの要因が0であれば割れないという極論もいえる。
・銅は応力腐食割れ感受性が極めて低い材料であり、通常の環境下ではほとんど問題とはならないが、条件によっては問題となる場合もある。詳しいメカニズムについては未だ理論的に解明はされていない。
・応力腐食割れ発生には、酸素(空気)と、水分(空気中の水分が結露)が必須である。保温材のつなぎ目や、端末の養生をしっかり行うことで、空気と水分が保温材と銅管の隙間に連続的に供給されにくくなり、割れが発生する確率は格段に小さくなる。
3.銅管の腐食・割れが生じる要因と対策「蟻の巣状腐食」
■現象
銅管の腐食が進行し、腐食孔が発生している状態で、腐食孔部分の断面状態が蟻の巣状になっていることから「蟻の巣状腐食」 と呼ばれている。写真7参照。
写真8のように管の表面状態を観察しただけでは腐食形態を蟻の巣状腐食と判定することができないため、腐食孔部分の断面形状を観察し、腐食孔の形態を明らかにする必要がある。
腐食速度が極めて速く、再現実験では数日で管肉厚を貫通するものもある。
■要因・対策
・蟻の巣状腐食は、蟻酸(ギ酸)や酢酸などのカルボン酸が腐食媒となって発生する。また、湿度(水分)、酸素(空気)も必須要因である。室内壁紙から放出された環境物質(例:ホルムアルデヒド)の影響を受けて蟻の巣状腐食が発生したという事例も報告されている。
・原因物質(腐食媒)の除去は効果的であるが、それが難しい場合、水分と空気を除去することが重要である。保温材のつなぎ目や端末の養生をしっかり行うことで必須要因である水分、空気が保温材と銅管の隙間に供給されにくくなり、蟻の巣状腐食が発生する確率は格段に小さくなる。
※ろう付けの際使用する酸化防止剤でアルコールを溶剤として使用しているものは、ろう付け時にアルコールが酸化してアルデヒドやカルボン酸になり、蟻の巣状腐食を引き起こす可能性があるので要注意。
疲労割れ対策は、振動を銅管に伝えないこと、管に凹みなどの変形を与えないこと、系統内で発生する熱応力等を分散させることが重要。
また応力腐食割れや蟻の巣状腐食は、保温材のつなぎ目や端末の養生をしっかりとすることで空気と水分が銅管表面に供給されにくくなり、防げる可能性が高まるため、施工時にはしっかりと気をつけるようにしておきましょう。
【冷媒用被覆銅管の腐食・割れの現象と要因を理解して対策しましょう!|INABA note vol.12】